妖勾伝

「黒葛には、
誰にも解く事ができない呪縛がかけられている。」



「呪縛……」


レンはその言葉の意味が掴めず、アヤを見つめたまま話の続きを待った。





「阿釈宗の傘下に入って間もない頃だったか、
将軍家の横暴なやり方はどんどん酷くなっていき、世は本当に荒れてゆくばかりだった。

それに加えて、闇に潜む物怪達も夜な夜な現れて悪さをするだけじゃ飽きたらず、陽の元にまで出て来て世を横臥する様になっていったんだ。」





黒葛もさる事ながら、阿釈宗もその頭を悩ませていたに違いない。



耳に届く、
下層で暮らす者達の、悲痛な想い。

仏に仕えながら、止めれぬ将軍家のやり方に口惜しい夜を幾晩過ごしたか。


黒葛も交え何度もその時の将軍と、話し合いが繰り返されたと云う……







「そんな折ーー
内乱に紛れて黒葛の中で、一人の女の人生を狂わせた者がいてね。

分家だと語られているが、私が思うには黒葛にとって、もっとも血の濃い人物だと思う。
力を受け継がなかった本家の誰かだろう。


夫も子供もいるその女に横恋慕し、女を我が手に入れる為だけに家族を皆殺しにしたそうだ。
その腹にいる赤子を殺す為に、毒まで盛ってな……」








その女ーーー

容姿は目も覚める程に美しく、
狂わされたのは、もしかしたら男の方だったかもしれない。


その事実を知った男の妻が怒りに身を狂わせ抑えきれず、最後には囲われていた女を血眼で見つけ出し、なぶり殺しにしたと云う。




それはもう、
酷い殺され方だったとか……
















一生、
呪ッテヤル…

この躰が朽ち果てようトモ、
黒葛の血を引く者スベテを根絶やしにするマデナーーー