妖勾伝

そんな真摯に見つめるレンの視線に気付き、アヤはそうおどけてみせた。


風がたおやかに凪いで、舞い散った桜の花弁がアヤの頬を優しく撫でる。




「十三年前、
あの処刑場で預からせてもらったレンの命。
もう少しだけ、私に預からせてもらえないか?


これから向かう都へ、レンも一緒に来て欲しいんだ。

長い旅に、
なりそうな気がして……」







長い旅ーーー


その言葉に込められた、意味。

レンはアヤを見つめたまま、ゆっくりと頷いた。





その時のアヤの瞳は、脳裏から未だ離れる事はない。

凛と研ぎ澄まされた、
瞳の色。








都から、
遠く離れた穏やかな村。


喧騒から隔離されていたその村から都へ行くという事が、何を意味しているのかをアヤはその肌で感じていたハズ。



呼ばれた、本当の理由もーーー













「都へ呼ばれた理由……

世に溢れ出した闇達を、納める為だけじゃない。
何か他にも、理由があるんじゃーーー」



もう一度そう尋ねたレンに淡く息を付き、アヤは伏せていた目線をゆっくりレンに向かって投げた。






「闇を納める者として、世に平穏を齎すのが黒葛の役目。
それは代々黒葛の家に生を成した者なら、当たり前の様に受け継がれる意志だった。

だが、
その意志を破った者がいてね……」



アヤはそう云うと、堅く閉ざされた戒めを吐き出す様に、レンに話し始めたのだった。