妖勾伝

「もとを辿れば、
今の将軍家の血筋は、阿釈宗の一派からの出らしい……」








長く続いた、暗黒政治。


欲望に満ちた五百年の政治が仇となったのか、どうしてもその時将軍家には後継ぎに恵まれなかったのだ。




毒殺。

病死。

死が死を呼ぶ様に、相次がれてゆく死ーーー




それは、見る間に途絶えてゆく御家の血に、業を煮やした将軍がとった苦肉の策だったのだろう。


当時、密接に関わっていた阿釈宗との縁組みが、人目をはばかって内密に行われたのだが、

時を経て阿釈宗が国政に携わり始めた今、その事がまことしやかに世で囁かれている。



レンの耳にも届く程に。






荒れ果てた世を、将軍家と成り代わりその影から密やかに納めた阿釈宗。


ーーーそう、
将軍家が、阿釈宗を抱える理由。





しかしその事を、荒立て云う者は誰一人いなかった。


実質、将軍家の血筋が、五百年前の謎の自害で絶えたという事が分かっていても、世に平穏が戻ったのだから……











「阿釈宗……」




それは、世を支える安泰な宗派なのだろうか。



未だ見ぬ大きな都に、レンは不安を覚える。

レンは完全に力を取り戻した牛鬼を見上げ、もう一つ気にかかっていた事をアヤに訊ねてみた。






「阿釈宗が、黒葛を都に呼び寄せている理由は何なんだ?

この五百年、深い闇に潜んでいた物怪達が再び世に溢れだした今、それをアヤに納めさせる為だけじゃ無いだろう。」



伏せられた、アヤの長い睫。

月明かりが、なめらかな頬に淡い影を落とす。




ただ黙したまま何も答えないその姿に、レンはソッと続けた。