「世に存ずる物怪の中で、最強と唱われた物怪ーーー牛鬼。
その躰は、五百年前に封じられたハズ。
それが、何故今頃…」
アヤは、グッと牛鬼を睨み据える。
「神月は
五百年もの間、念珠岩の中に封じられていたと云っていた……」
レンは、
そんなアヤにポツリと言葉を零した。
その視線の先に蠢く、八つの手足。
乾ききった地面に爪をつき立てて、不気味な影を落としている。
「そう…
黒葛にとっても、牛鬼は手に余る存在だった。」
喋る度に、痛む躰。
その瞳を苦痛に細め、アヤは言葉を続けた。
「五百年前に世で戯れ過ぎた牛鬼は、阿釈宗の僧侶にその愚身を納められたと……
若い僧侶だったらしいが、かなりの徳を積んでいたみたいだ。
自身の生命と引き換えに牛鬼を封じ込めたと先代から訊いている。」
「阿釈宗…?
確か、
今向かっている都……
そこにアヤを呼び寄せている人物がいる宗派が、そうじゃなかったか?」
ふと返り見るアヤの瞳は淡く滲み、痛みを堪えながら喋る事もやっとなのだろう。
支える躰が、少し重たく感じられた。
「あぁ。
闇を納める力を持つ黒葛が、それ以前から世に蔓延る物怪と対峙していた阿釈宗の傘下に入ったのが千年程前。
阿釈宗とは、それ以来の付き合いだ。
ちょうどその頃、世がどうしようもなく荒れていてね……」
国内での内乱。
先の将軍の、
欲望に彩られた異国戦ーーー
語られ継ぐ堕ちた醜景に、レンは小さく舌打ちした。
「人に満ち溢れた醜貌が、闇に潜む物怪を刺激したんだろう。
牛鬼を納める五百年前まで、凄まじいものだったらしいよ。」
幼い頃からその脳裏に刻みつけられてきた、絵巻語り。
アヤは痛みを堪える様に睫を伏せた。
その躰は、五百年前に封じられたハズ。
それが、何故今頃…」
アヤは、グッと牛鬼を睨み据える。
「神月は
五百年もの間、念珠岩の中に封じられていたと云っていた……」
レンは、
そんなアヤにポツリと言葉を零した。
その視線の先に蠢く、八つの手足。
乾ききった地面に爪をつき立てて、不気味な影を落としている。
「そう…
黒葛にとっても、牛鬼は手に余る存在だった。」
喋る度に、痛む躰。
その瞳を苦痛に細め、アヤは言葉を続けた。
「五百年前に世で戯れ過ぎた牛鬼は、阿釈宗の僧侶にその愚身を納められたと……
若い僧侶だったらしいが、かなりの徳を積んでいたみたいだ。
自身の生命と引き換えに牛鬼を封じ込めたと先代から訊いている。」
「阿釈宗…?
確か、
今向かっている都……
そこにアヤを呼び寄せている人物がいる宗派が、そうじゃなかったか?」
ふと返り見るアヤの瞳は淡く滲み、痛みを堪えながら喋る事もやっとなのだろう。
支える躰が、少し重たく感じられた。
「あぁ。
闇を納める力を持つ黒葛が、それ以前から世に蔓延る物怪と対峙していた阿釈宗の傘下に入ったのが千年程前。
阿釈宗とは、それ以来の付き合いだ。
ちょうどその頃、世がどうしようもなく荒れていてね……」
国内での内乱。
先の将軍の、
欲望に彩られた異国戦ーーー
語られ継ぐ堕ちた醜景に、レンは小さく舌打ちした。
「人に満ち溢れた醜貌が、闇に潜む物怪を刺激したんだろう。
牛鬼を納める五百年前まで、凄まじいものだったらしいよ。」
幼い頃からその脳裏に刻みつけられてきた、絵巻語り。
アヤは痛みを堪える様に睫を伏せた。



