妖勾伝

レンと同じく、視線を上げる神月。

化け猫に向かい、その片眼を愉しげに歪ませた。



「所詮、猫は猫だ…

たかが、百年生きた程度だろう。
あんなにぶくぶくと膨らんで虚勢を張っても、くだらんだけだ。」


「ーーくだらんって…」








そう簡単に云い直る神月の横顔を見つめ、レンは思わず荒げそうになった声をひそめた。




「…神月、
ぬしの力は、ほぼ無くなったんじゃなかったのか?」


訝しむレン。

神月は、チラリと刺すような視線を投げた。





「貴様のせいで、
ほぼ、な……」






向き合う二人を紡ぐ様に、生温い夜風が一凪してゆく。

レンは渇ききった喉に、ゴクリと唾をのみ下した。







「俺と貴様は、相対する存在だ。



俺の力を貴様が受け入れたあの瞬間から、生命を共にする切り離す事のできない関係になったと、俺は思っている。


力を分けた意味。
そして、
俺と貴様の生存の理由。

貴様が満ち月を厭う牙持つ獣なら、俺の云っている事はわかるだろうーーー」












ーーー神月とわちの、相対する関係…









未だ姿を現す事の無い、月の光。


新の月に力を発揮するレンにとっては、今宵の満ち月は厄介な姿にしか見えることはない。

アヤを守りきれない自身の歯がゆさが、身を叩く。




いまいち掴みきれない神月の物云いに、レンは眉を顰めた。











どういう意味だーーー







そう云いかけたレンの言葉を制す様に頭を軽く叩くと、神月は化け猫に向かい、その茂みを分ける。




「ーーーレン、
ゆくぞ!」