妖勾伝

零れそうになる涙を見られまいと、

地に向かって俯くレンの頭をワシワシと撫でつけ、神月は観念した様に声をあげた。



「分かったから、
もう泣くな。

男だろ、鬱陶しい……」



「ーーっ!
泣いてなんか…」







その言葉に間髪入れず、ムッと口を尖らせたレンは神月を睨む。



「何があっても、アヤを守るつもりなんだろ。

頑固な奴だ、
貴様は…」










先程の
アヤを切に想う、レンの表情ーーー


その顔を思い浮かべ、神月は小さく息をもらす。










茂みの中、
しゃがみ込んでいても神月とは比べ物にならない躰格のレン。

目の前で意気込むそんなレンの鼻っ柱を人差し指でピンと弾くと、神月は少し先でのたうち暴れ狂う化け猫を顎でしゃくってみせた。






「婆が身動きとれない間に、アヤを安全な場所まで運べるか?
何かあれば、俺が援護する。

アヤを守る気があるんなら、それ位出来るだろう。」







レンの細い肩。

負った痛みで微かに震える躰を見て、神月はニヤリとほくそ笑んだ。




「当たり前だ!

何があってもわちがアヤを守る。





だが……」









ーーー化け猫を討つには…





レンは、濛々と薄闇に砂埃を立てながら、大地を揺すり、もがく化け猫の姿を苦々しく見上げた。







「婆は任せておけ…

貴様がアヤを守る理由があるように、俺にも貴様を守る理由がある。

何が何でもな。」