妖勾伝

珀の肩を抱き、そう叫ぶアヤ。

凛とした瞳が、
淡く滲む。



躰を撫で荒んでゆく邪気から珀を守る様に、その肩を切に受け止めていた。


もどかしげに、握られる拳。






場慣れしていない珀にしてみれば、酷い状況だ。





チラリとアヤに視線を送り、心得た様に小さくレンは頷いた。


ーーーケリを、

つける…














ユラリユラリと立ち上る、
化け猫の残影。



それは曲々しく歪み、再び醜態を象ってゆく。

引き寄せられた、
闇の破片ーーー






「ぬしも、
ひつこいぞ……」






目の前でいとも簡単に戻ってゆく化け猫を見据え、レンはそうボヤいた。












幾度斬っても甦る悪態なら、必ず急所があるハズ。


そこを、叩けば。








レンの握る太刀を狙う様に、化け猫の四肢が伸びてくる。

張り巡らされる素早さに息を留め、レンは地を蹴り高く舞い上がった。









ーーー狙うは、
その首


次こそ、仕留める…









化け猫の死角に飛び込むレン。


躰を宙で捻りながら振りかぶり、力いっぱいその頭に叩き付けたのだった。














「レン様、

やめてぇーーー!」