妖勾伝

一瞬の隙をついて、振り降ろされる太刀。


見定められた軌跡を辿り、化け猫の躰を裂き斬る。



太刀から流れ落ちる飛沫と相俟って、闇が四方に飛び散った。
















ギャァァァァァァァァァーーー










地面に落ちる、化け猫の片腕。

地が揺れる。




落ちた瞬間、猛々しい音を立てて、それは闇の藻屑と弾け消えた。













「ク、
クソゥ……

なめ腐りおってぇ…


これしきの力で、
儂をどうにか出来るなどと、見くびるなよ!」










見開かれた化け猫の、
煮えたぎる眼玉。

地を焼き尽くす様な熱を放つ。



パックリと開くその裂けきった口から、悪醜が爛れ落ちた。









「ーーウッ」



躰を叩きつける、熱の籠もった風圧。

焼け付く地に両の足を滑らせ、化け猫の邪気にレンは無我夢中で堪えた。




顔を庇った衣地の裾が、ジリと灼け切れる。













「キャァーーー!!」











珀の叫び声。


辺りを轟かす気配に堪えきれず、悲痛な声が漏れた。









「レン!

このままでは、
珀がもたない!」