妖勾伝

化け猫の心無い言葉に怒りを覚え、レンは熱くわき起こる感情を露わにした。












苦々しい、
想い。




レンはそれを、幼い頃から厭という程その肌で味わってきた。




受け入れてもらえない者の辛さ。

温もりに飢えた日々。




しかし、

そんなレンにも珀と同様に、傍にいてくれた人がいたからこそ、こうして強くなれたのかもしれない……







ーーー姐サ…









珀の痛む心情が手に取れる程に分かったからこそ、レンには化け猫の吐いた言葉が許せれなかったのだった。












「ハッーー

戯れ言を……」



そう小さく云いきった化け猫は、可笑しげに顔を歪ます。






はなから何事をも信じぬその色を映さない二つの眼は、泥の中に沈めたまま、一生そこから浮かび上がる事はないのだろう。


乾いた声で云い捨てる様に、化け猫は続けた。






「……家族だと?


あんな出来損ないな女など、はなから興味なんて無かったわ……
翠人がどうしてもと云うから、首を縦に振ったまでだ。


何も出来ない人間に、感情を持つということ程、馬鹿げている事は無い。

翠人も、そんな誰からも受け入れられない腐った女を、ただ憐れんだだけだろう。」