妖勾伝

幼かった珀へと突き立てられる、浅ましい嫌悪の棘は数え切れない程だった。

心無い者達の、
容赦無い疎みや嘲り。

好奇の眼差しーーー






そして目の前に在る理解しがたい存在を、


ただ、

ただ、排除しようとする無知の心。


赤く腫れあがった膿を、簡単に切り取るように、

取り除かれた膿のワケなどには、
目もくれず…




きっとその者達にとったら、その珀の存在など取るに足らないモノだったに違いないんだろう。










すべての曲々しい思念が入り混じる中で、死という選択もできぬまま、

誰からも守られずに、珀は凍てついた孤独を、こうして生きてきた。




そんな、幾重にも厚く塗りたくられた無碍な感情を思い出したのか、

怒りを露わにする様に、珀の怨の炎は激しくその色を増したのだった。










「ーーっ黙れ!

翠人がいなければ…
この世に翠人がいなければ、意味が無いんだ!


あの人が、
いなければ……」










凍てついていた、珀の心を熱く躰を火照らした、その存在。



初めて視線を交わしたあの瞬間は、

今でも思い出す度に、珀の躰の芯を疼かせるのだった。