「何?」



由梨絵は嫌そうな顔をして俺を睨む。



「どこに行くの?」



「伸也さんとデート」



機嫌良くあの男の名前を口にした顔を見たくなくて手を離した。



何も言えなかった。



そんな男と会うなって言ってやりたかった。



俺の側にいてくれって言ってやりたかった。



今日は俺の誕生日なんだって言ってやりたかった。