が、兄さんの姿は見えなかった。
まあ仕方ない。兄さんは訓練生だから。
それなのに僕は…。
気づいたら竹刀を握りしめてた。
それを無我夢中で振りまわす。
兄さんには馬鹿な奴だって言われるだろ
うな。
悔しい…。
同じ偉大な父さんの息子なのにどうして
こんなに差がつくんだ!
その日は日が暮れるまで、振り続けた。
家に帰ると、もう夕食の準備が出来てい
た。
「遅かったわね。兄さんに負けたくなか ったからかしら?」
「…」
「図星。手を洗って来なさい。食べるわ よ。」
「うん。」
母さんはいつも通りの優しさで僕を励ま
してくれた。
「冷たっ!」
あまりの水の冷たさについびっくりして
しまった。
あぁ。どうしたら強くなれるだろうか。