空の下


それは突然だった。

何の前触れもなくあたしの前に

現れた。



あたしは、高校2年の
仲野陽奈乃 なかのひなの

どこにでもいる女子高生。

「ひ〜な〜、か〜え〜ろ〜!」

「あ、うんっ。」

あたしを誘ってきたのは

坂田光 さかたひかる

光とは高校生から同じで

まだ一緒にいる時間は少ないけど

大切な親友。

「昨日ねあらたが言ったんだよね。」

あらたは光の彼氏で野球部で頑張っている。

「え?何を?」

「別れようって。」

へへって笑う光が悲しくて

あたしは涙が溢れた。

「え、ちょ、なんでひなが泣くのよ!」

「だって...だって光あんなに好きだったのに、あんなに愛してたのに。」

「きっとねぇ、あらたはあたしの運命の人じゃなかったんだよ。」

運命の人....?

運命なんてあるの....?

好きだったら、それが運命でしょ....?


「あたしとあらたが運命だったらね
いつかどこがでまた会えるの。」

そんな気がするの、なんて笑う光は

あたしよりずっと大人っぽく見えた。

あたしはまだ運命の人に出会ったことがない。

正確に言うと、恋をしたことがない。

恋ってどんなの?

辛い?幸せ?

早く知りたい。

「ひな、ありがとね、また夜電話するね。」

光と駅で別れたあたしはお決まりのカフェへ行く。

「いらっしゃいませ。」

うっ....。

またこの店員。

「ご注文はお決まりですか?」

「え、あぁ、コーヒーで。」

「かしこまりました。」

この店員、毎日いる。

あたしはこの店員が苦手。

このくしゃって笑う笑顔。

大きくなく小さくもない綺麗な目。

なんか嫌だ。

「お待たせしました。」

コーヒーを机に置いて。

まだそこにいる店員はあたしに向かって
こう言った。

「あんた、俺に気あんだろ?」

は....?

あたしがあんたに気がある....?

「失礼します。」

あたしはただの店員にわけのわからない
ことを言って店を出た。

なに、あの店員。

なんなの。

気があるなんてなんであいつに言われなきゃならないの?

気があるってなに?

光に電話したいけど....

今はできない。

このモヤモヤを心にしまっておこう。

もう、カフェには行かないでおこう。

あの男には、会いたくない。