「しっかりしてよ。靴 脱がなきゃダメじゃない!」


今の声って…?


やっぱり 聞き間違えなんかじゃない。


女の人の声が確かに聞こえる。


廊下につながるドアを開くと


「え……?」


玄関先で 知らない女性が、座りこんでしまっているダイちゃんの黒い靴を脱がせていた。


「大地、本当に大丈夫?」



───だ…いち??



あたしは付き合って2年が経った今だって、ダイちゃんのことを名前で呼んだことなんて…1度もない。


それなのに その女性は もうずっと前から、ダイちゃんのことをそう呼んでいるかのように


フツーに名前を呼び…ダイちゃんの頬に心配そうに触れる。


この状況が すぐには理解できなくて、しばらく ドア先から2人を見ていることしかできなかった。


「大地、立ってよ。ベッドに行こう?こんなところに 座ってたら風邪引くから」


そして背の高い女性が 足元がフラフラしているダイちゃんに自分の肩を持たせ、抱き抱えるようにして寝室に運んだ。