「…今夜…泊まっていけよ?」
明日は まだ金曜日。
お互い学校があるってわかっているけど、どうしても 自分の側からヒナを離したくなかった。
「ダイ…ちゃん?」
俺が言ったセリフに 驚いたヒナは、思わず手に持っていたスポンジをシンクの下に落としてしまい、黙ったまま…体が動かなくなったみたいに固った。
ジャ──ッ…
蛇口から勢いよく流れ続ける水の音が、静かな部屋の中に響く渡る。
どうして…何も言わないんだ?
頼むから 何か言ってくれよ?
もっと強くヒナを抱き締めようとした時…
「……ゴメン。どうしても帰らなきゃいけないの」
聞こえてきた…ちっちゃな声。
そして 自分の胸の前にある俺の手を、ギュッと握って…もう一度
「ホントに…ゴメン…ね」
──って…切なそうに小さな声で謝った。


