「何時って…目の前に時計が見えてるだろ」
ちょうど ヒナの正面にある…スチール製のデジタル時計。
時間は『20:32』を示していて、それを見るなり「あたし…帰るね」とヒナが言い出した。
「なんで…飯は?」
いつも ヒナが作った夕食を一緒に食べることにしている俺たち。
今まで1度だって、それを欠かしたことはないのに…
「今日はダイちゃんが好きなハンバーグを作ったよ」
「やった。マジで?」
「でもゴメンね…今日はダイちゃんと一緒に食べれない」
俺の方を見ないで、帰る準備をしはじめたのか…ヒナが慌てた様子でカバンを手に取ろうとする。
「この前から…お前 ちょっと様子がおかしくね?」
瞬間的に俺はヒナの肩を掴んでいた。
「な…何が?」
「今日は 何の用事があるわけ?」
「ママにね、留守番を頼まれちゃって……」
「ヒナ…それ、本当だよな?」


