「じゃあ……。撮影はもうできないんですか?」
「撮影はする。最後まで。だから聞いておきたいんだ。君は最後まで主人公を降りないと約束してくれるかい?」
「……」
「この映画の主役は君でなくちゃいけない。そのためには君が必要なんだ」



「僕は降りません。最後まで」
「良かった安心したよ。ただ、ひとつ困ってるのが、七海晶用の曲を書いてくれるアーティストも降りてしまったんだ」
「……僕、作曲はしたことありません」
「なんとかする。このままで終わってたまるか。明日話し合おう」



電話を切ると、落胆と同時に、妙にすっきりとした気持ちになった。



諦めない。
こんなことで夢を諦めたりしない。


笑って笑って。



「東京に帰ります。お祖母さん、この手紙は倖太に必ず渡します」
「琴音」
「映画が完成したら、必ず呼びますね」