「いい加減、本当のことを話してほしい」と声をかけた。
「ここの駐車場は、19時を過ぎたら入れない。アヤさんをかばっているのは、もうわかってるから」
「違う、私が殺したんだ」
「解剖の結果、死亡推定時刻は19時過ぎなんだ」
「……」
「18時に、奥多摩の宿を出たお前が、1時間で六郷土手まで来るのは不可能だ。19時に死体を捨てれるはずがないんだ」
「時間を間違えているのかも」
「それに死因は溺死だ。すでに死んでいた被害者を川に捨てたなら、彼女が水を飲んでいるはずがないんだ」

少しずつ、松本の顔が下を向いた。
鏡原は「そもそも、我々は死亡推定時刻を、君に話したりしていない。テレビでも話していない」と言った。
「それに、被害者のバッグに入っていたガラスの靴も、指輪のことも、君は知らなかった。君は事件に直接関わっていないとしか思えない」

「犯人は君じゃない」

「違う違う違う!! 私が殺したんです」
弾かれたように顔を上げて松本が叫ぶ。
「橘、私が美香さんを殺したんだ!」
「……」
「アヤさんじゃないんだ! 彼女はそんな人じゃない」