再び母の実家に戻ると、祖母は、そっと小箱を二つ差し出した。

「アヤが預けたものです」
「拝見します」

同じデザインの指輪が、それぞれ収められている。
ダイアモンドが一粒はめ込まれたシンプルなデザインだ。

「率直に聞きます。これをどう思いましたか」
「婚約指輪のようだなと思いましたし、アヤもそう言っていました」

「3年前、アヤが突然帰ってきて、指輪を預かってと言ってきました」
「何か話していましたか」
「美香さんにプロポーズされたと」
「美香さんから、ですか」
「海外で結婚しようと。娘は長年の夢が叶うと泣いていました。ただ、ひとつだけ条件があって、それが折り合わなかったらしいんです。それで彼女を」
「殺してしまったんですね」
「もみ合いになって頭を打ったと話していました。その後、死体を捨てたと言っていました」
「本人がそう話したんですね。間違いありませんか」
「はい」
「証言してもらいます。この指輪は預からせてもらいます」
「あの……。今、疑われている人は、どうなるんでしょう」
「指輪があれば、釈放されるでしょう」

署までご同行願います、と玉木は言い、外に待たせていたパトカーに祖母を乗せた。

「条件ってなんだったんだ……?」
「さあね。これから事情聴取する、君は先に東京に帰って」
「玉木さんは」
「もう1軒寄るところがある」