話を聞くためと早朝に松本の家を訪ねた。

「水原アヤさんの車が発見されました。あなたの親戚の、家でです」
「何の話ですか」
「奥多摩に父方の親戚の家がありますね。そこのガレージにあったんですよ」
「……何の話か、わかりませんね」

ビニール袋に入れられた、ガラスの靴。
不思議なものを見るように、松本は首をかしげた。

「車内からガラスの靴が見つかりました」
「ガラスの靴……ですか?」
「遺体を捨てて、バッグとハンカチを回収して、その後、墓に隠した。その時、ガラスの靴に君は気が付かなかった」
「なんなんですか。ガラスの靴をバッグにいれて持ち歩くわけないでしょう」
「持っていたんだ。小さなガラスの靴を。息子からのプレゼントを彼女は肌身離さず持ち歩いていたんだ」

「これには、ハンカチと思われる繊維が付着していました。被害者はバッグからハンカチを取り出したらしい」
「それで」
「出血していたからハンカチを取り出した。意識がぼんやりしていても、血を拭こうとしたんだろう。
つまり、車内で被害者はまだ生きていたんだ」
「……」

「待ってください、僕は何も知りません。頭を殴られて殺されたんでしょう?」
「誰からそんなことを聞いたんだ? テレビでそんなことを話していない、検視結果までは、倖太くんに話していない」
「……琴音に……聞いたんです」
「だとしたら、思い込みだろう。検視は違う結果を示している」

「誤解があるなら聞こう、知っていることを話せ」