鑑識がかけつけ、車内に遺留品が無いか調べ始めた。
倖太と琴音はこっちにこい、とガレージの隅に呼ばれる。

「俺たち警察が事件の内容を話すのは、本来なら許されることじゃない」
「はい」
「このことがバレなら、俺もタマテルも間違いなくクビだ。倖太は当事者だから……まあ……。問題は君だ。琴音」

琴音は視線を落としている。

「君が父親を逃がしたことによって、犯人が、行動を起こしている可能性がある。平たく言うと、お父さんは殺されているかもしれない」
「……」
「だけど、我々は警察だ。捜査をやめる訳にはいかない」
「はい……」
「どんな人間でも命が一番大切だ。それは、加害者でも被害者でも変わらないと思っている。倖太は優しい子だから復讐なんてしないと俺は信じている。だけど、松本がどういう行動に出るかはわからない」
「……何を言いたいんですか」
「何もするなってことだ。警察を信用して欲しい」
「僕は言うべきことを黙っていました。それに」
「過ぎたことだ。お前たちは一人きりなんかじゃない。大人たちがどんなに嘘をついていても、そんな大人ばかりじゃないんだ。事件を解決しよう。みんなで」

「もう一度だけでいいから、大人を、いや、俺たちを信じて欲しい」