バッグの中には、携帯電話、捺印済みの離婚届、財布が入っていた。
離婚しようとしていたのは本当のようだ。
財布の中に入っていたレシートを調べると、宝石店のものだった。
店員から購入した商品の履歴を調べてもらうと、ペアリングで、立花美香本人が引き取りに来ていた。

「……指輪ですか」
美香が亡くなって、彼女が住んでいたマンションは引き払っている。
荷物はすべて保管してあるが、指輪なんてなかった。
同じデザインの写真をもとに探しても見つからない。

「……アヤさんが処分したのかな」
「そうかもしれん」
「ところでガラスの靴は」
「無かった」
「……そんな」
「入ってなかった。墓の中にもだ。鑑識も確認している」
「アヤさんは死ぬ間際にガラスの靴について答えてくれました。あの状態でいきなり「ガラスの靴は?」と聞いて、普通なら答えられません。彼女はきっと見たんです」
「やはり水原アヤの車を探す必要がある。元マネージャーの松本を調べたが、何も知らないの一点張りでな」