翌朝、美香の墓を開けることになった。
寺と石材店に事情を話し、納骨室を開けてもらう。

中にはブランドものの赤いバッグが、白い布に巻かれて入っていた。鑑識がそれを調べるため引き上げていった。

鏡原らは署に戻らず、お線香を供える。

お前の母親でもあるんだから、と二人で手を合わせる。

「ごめんなさい」
「いいよ。琴音は何もしてない」

2月の風は冷たく、オレは凍えた手をこすり合わせた。

「オレは橘倖太の役を降りられないし、お前は水原琴音の役を降りられない」
「そうだね」
「兄弟と名乗れなくてもいい。それでも構わない」
「倖太は倖太だよ。血がつながってたからって僕たちが僕たちであることは変わらない。そうでしょ」
「……ああ」
「好きでいてもいい?」
「もちろん」