「でも、ラーメン屋の友達に告白された話をしてくれた時、君は言った。『オレに断る権利はある。でもあいつが、オレを好きでいることを止めさせる権利はないんだ』って。母さんが立花美香を愛していることを止める権利は誰にもない。
僕にも、倖太にもない」

ただ、好きだったんだ。心から。

だからといって殺していいはずがない。

「お母さんに謝って欲しかった。君にも……、母を追い詰めたことを、謝って欲しかった。でも、それを直接君に言う勇気すら、僕にはなかったんだ!」
「オレが悪いの?」
「違う。そういう意味じゃない」


「ごめんね、倖太……。僕の母さんが悪かった。代わりに謝ります」

「ごめんなさい……。許してください。君を長いこと悲しませたことを、母さんの罪を、どうか許してください」


僕は倖太の胸で泣き続けた。
大声で。

「嫌われると思った」
「嫌いになったりしない。大丈夫だから。琴音。落ち着いて。怒らないから」

背中を撫でてくれる手が優しい。
離さないで。
一人にしないで。