……銃だ。


「こうやって」

銃口が向けられる。

……ウソだろ。


「刑事さんが殺人とか、穏やかじゃないですね」
「僕は倖太くんに義理はないから、君が死んでも別に心は痛まない」

風が強くなってきた。

「他人の墓を掘り起こそうとしていた君はなんなんだい」

月も出ない真夜中、しかも真冬。

「死者の冒涜以外の何者でもないじゃないか。君は誰のために罪人になろうとしてんの」
「誰のため……」
「自分のため? 倖太くん? それとも家族?」
「……僕は……。倖太のために……」
「倖太くんのためなら、墓を暴くなんて止めなよ」

「何か知ってるなら、倖太くんに話して。琴音くん、君はまだ何もしてない」
「……」
「美香さんの墓には、彼女以外のなにが眠ってるの。倖太くんに話そう」


銃口はまだ僕に向けられている。

「逮捕しようと思えばできるんだよ? でも鏡原さんはよく言うんだ。相手から話してくれるのを待てって」
「……」
「君が話してくれるのを待ってあげてもいい。君の口から知っていることを話して欲しいんだ。倖太君のことを思うなら」