倖太はまだ目を覚まさない。
玉木の目を盗み、病院を抜け出した。
僕はタクシーを乗り継ぎ、墓地へ向かった。

倖太が死んだら僕の責任だ。
もう逃げることはできない。

途中、ホームセンターに立ち寄り、鉄のバールを購入する。

雪がちらつく墓地は人っ子一人いない。

立花美香の墓。


軍手の上にゴム手袋をはめる。


ごめんなさい。
許してください。


僕は墓泥棒をすることを、美香さんと倖太と家族全てに向けて謝った。

バールを握り締めた。


「こんな夜中に何してんの。琴音くん」
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁ!」