しまった。
血の気が引いた。

「……いいから、病院が先だ、行くぞ」

マンションを出る。
鏡原は後部座席に乗り込み、倖太を抱きかかえたまま聞いた。

「兄弟だといつ知ったんだい」
「……」
「我々には何も言ってくれなかったね」

車はすぐ近くの病院に止まり、倖太はすぐに医者と看護士らに運ばれていった。
当分は面会謝絶だろう、と鏡原は言い、盛大にため息をついた。

「君が刺したんじゃないんだな」
「はい」
「そうだろうな。血が跳ね返った後がない。しかしあいつが自殺する理由も無い」
「まだ死んでません!」

僕は思わず言い返したが、二人の目は冷ややかだった。

「……琴音くん。自分の立場が解ってないようだね」
「もし倖太くんが死んだら、君が間違いなく容疑者だ。わかってる?」