話は11月までさかのぼる。


母が亡くなり、納骨の日はあっという間に訪れた。

新しい墓に新しい骨。

読経が済み、遺骨を納める。

本当にお別れなんだ。
彼女は何も言わずに死んでいった。

死の間際の母の態度に、家族はむしろ傷ついたといっていい。

どうして倖太にだけ……。

あの子は特別なのか。

隣に並んだ二つの同じ形の墓。
彼女は喜んでいるだろう。そう信じたい。今は。

父と妹二人を連れ、墓地を出ようとしたとき、ふと、違和感を感じて振り向いた。


新しい墓と並んだ、美香さんの墓。
この墓は3年前に出来たもののはず。それなのに、防水シール材が妙に新しい。

正面に線香立てがあり、下が納骨室になっている。




まさか。

美香さんの墓を開けたい衝動にかられるが、今日は母の納骨に来たんだ。
そんな非常識なことはできない。