スーツケースを待つ間に、琴音からメールが来た。

『出口で待ってる』

え?


出口へ急ぐと、確かに琴音がいた。
マフラーをぐるぐる巻きにして、突っ立って待っていた。

「琴音……。迎えに来てくれたの?」
「ああ……うん。電話で」
「?」
「倖太が泣いてるみたいに、思ったから」

オレは泣いてた?
琴音に悟られるくらい?

「そんなことないって。琴音、腹減ってない? なんか食って帰ろう」
「うん」

お、素直だ。
もっといつも素直ならいいのに。

「今日、僕の誕生日だって知ってた?」
「えっ、言えよ!」
「マネージャーなんだから、誕生日ぐらい把握しといてよ」
「そうだったな。オレが悪かったわ。家族といなくていいのか」

オレの弟なのに。
言ってしまいたい、言えるわけない。

「今日は泊まれない。だから迎えに来た」
「ありがとう。嬉しいよ」

連れて帰りたい。
どうしたらいいの、オレの気持ちは変わっていないのに。

「誕生日だと知ってたらプレゼント用意したのに。ごめんな」
「謝らなくていいよ」
「そう。琴音、プレゼント何が欲しい?」

しばらく悩んだ後、琴音は何もいらないと首を振った。

「欲しいものは自分で手に入れるよ」
「……」
「でも倖太がそばで手伝ってくれたら嬉しいな」