そうだ。
アヤさんのオフィスにも、この神社の写真があった。

彼女たちはふるさとを忘れていたわけじゃない。
帰りたくても帰れない事情があったんだ。

昨日見せてもらった写真。
わざわざ生まれたばかりのオレを母さんはここに連れてきた。
本当は実家に帰りたかっただろうに。
両親に会わせたいと思っていたに違いない。

「母さんを許してあげてください」


「我儘な娘だったかもしれませんけど、きっと事情があったんです」
「親に顔向けができないような事情か」
「そうかもしれません」

「家出みたいなものだったかも知れないけど、親を忘れたわけじゃありません」
「……」
「オレが生まれた時に、この神社にお参りに来たってことは、自分に親がしてくれたことを大切に思ってたんです。そうに違いありません」
「それなら顔を出してくれても良かったんじゃないか」
「母さんも若かったから、勇気がなかったんです。代わりにオレが謝ります。親不孝な母を許してあげてください」

「怒ってなんかないんだ」
「……おじいさん」
「淋しいけどな。孫が良い子に育ってくれてよかったよ」

ただなあ。
祖父はため息をついて続けた。

「バカ娘だったけど、殺されなきゃならないほど、ひどい子じゃなかった。そうだろう?」

彼女は、優しい人だった。
オレが一番よく知っている。

「……そうです。誰よりも優しい人でした。オレが、必ず、犯人を捕まえます」