警察署で出迎えた鏡原は、権田の服装を見てほんの少しだけ眉をひそめた。
婦警にタオルを用意させて顔を洗ってくるように言った。


「おい倖太」
「言いたいことはわかってます。賞金目当てだって言いたいんでしょう?」
「わかってるならなんで連れてきた」
「彼はガラスの靴を見ています。そのことは僕はテレビで言わなかった。嘘をついているとは思えない」
「……」
「彼の言うことが本当なら、水原アヤの車の中に、ガラスの靴があったことになります」
「話は聞いてみるけどな。調書を作るのはこっちなんだぞ」
「いつもありかとうございます。事件が解決したら温泉にでも行きましょう」
「バカ言え」

その時、タマテルこと玉木が「温泉ならオレも連れてってくださいよ」と顔を出した。

「ちょうど良かった。倖太くん、君に手紙が来てるんだ」
「オレに?」

差し出された茶封筒には見知らぬ名前があった。

「デビューでもさせてくれるんですかね」
「何言ってんだ。じゃ、お前が連れてきた奴の話を聞いてくるよ」
「よろしく頼みます」



署内で缶コーヒーを飲みながら、封筒を開けた。
手紙と航空券が入っている。
美香について話したいことがあると、書かれている。
差出人は大道寺レナとなっている。

母宛の年賀状で名前を見たような。

事情聴取を終えた鏡原を待ち、意見を聞いた。

「美香さんの友達の女医だ。来いってか」
「こちらに来てくれる気はなさそうですね」
「わかった。お前はその航空券で行け。警察には話しにくいことがあるのかもしれん」