着信音に気づいて、慌てて枕もとを探った。

「はい、水原です」
「松木屋と申します。霊園の件でご連絡させていただいております。こちらは水原琴音様のお電話でよろしいでしょうか」
「霊園……?」
「水原アヤ様のお名前で契約させて頂いてます。打ち合わせさせていただきたく、ご訪問の日にちを決めさせて、」
「ちょっと待ってください。母が生前に契約したっていうことですか」
「さようでございます。お手元に契約書等はございませんか? こちらからお渡しさせていただいてますが」
「何も」
「それでは一度、伺いますので、いつでしたらご都合……」
「今日、これから来てください!」


母が契約していたのは、立花美香の墓の、隣の区画。

以前、倖太と墓参りした時、彼は何も言わなかった。
何も知らなかったんだ。


家族に黙って、母は自分の墓を決めていた。



死んでもなお、そばにいたい。



無言のメッセージを突き付けられて、僕は言葉を無くした。
それでも、彼女の最後の望みを無視するわけにはいかない。

僕は墓のデザインから材質まで、決めていった。
すべて美香さんの墓と同じになるように。