帰宅して、遺骨と遺影を安置する。
綺麗だったはずの彼女は、額縁の中で微笑んでいる。
倖太を罵倒した恐ろしい姿はどこにもない。

読経の間も、僕はぐるぐると母のことを思い出していた。
宴が始まると、知り合いの役者やテレビ関係者がぞくぞくと現れた。
以前スーパーライブの時に会った橋本や、映画監督の坂本。大変だったねと声をかけられる。
その時、慌しい足音が入ってきた。
「琴音!」
「松本さん」
「アヤさんが……本当に……」
「……来てくれて嬉しいです。母も喜びます」
遺骨の前に泣き崩れた松本の口から、迸るような嗚咽が漏れた。

どうしてこんなことに。

談笑していた弔問客の視線を一身に集めて、松本は泣き続ける。

「松本くん、こちらへ」

父がそっと近寄り彼を連れ出した。
二人とも、もともとは母のマネージャーだった。
積もる話もあるのだろう。

その時、入れ替わるように見慣れた姿が視界に飛び込んできた。

「お悔やみに」
「……倖太」