世間どころじゃない。
倖太も警察も、そして僕たち家族も、彼女を疑っている。

ああもう、泣きたい。
どこに行ったんだ。

「……琴音。警察を呼ぼう」
「父さん」
「疑われているのは仕方ない。母さんが家族に何も言わずにいなくなったのは事実だ」
「……そうだね。家族に何もいわずに」

気まずい沈黙の中、僕は倖太に電話をかけた。

「母さんがいなくなった」
「本当か? 鏡原警部に連絡するよ」
「お願い。……倖太しか頼れない」
「……わかった。まかせて」