倖太はお茶を淹れて、スイートポテトを出してくれた。
自分で作ったんです、と笑う。

「母は、彼女のお母さんとケンカして、家出同然で上京したと話してました。だから僕は母の実家も知らないんです」
「実家とは疎遠になってたのか。……なら、手紙や年賀状はどうだ」
「年賀状ならすべて取ってあります」

倖太はしばらく待つようにいい、二階からダンボール箱を抱えて降りてきた。

さすが女優、といったところで、膨大な数の年賀状だ。

事件が起きた当初に調べたが、見落としていることがあるかもしれない。
3年前の日付で止まっている年賀状の束。

「なにか手がかりになるといいんですが」
「署で調べるから、持ち帰らせてもらっていいか」
「はい」

倖太はいつでも紳士的だ。
余計なことは言わず捜査に協力してくれる。


早く犯人を見つけてください、と寂しそうに微笑む。


「さっき、ピアノ弾いてたな。何の曲だ?」
「オリジナルです」
「そうなのか」
「自然に出てくるんです。なにかできたら、琴音にあげようと思ってるんですけど」