墓地の駐車場に、見慣れた母の車があった。
まあ、鉢合わせするだろうと思ってた、と倖太はいい、僕たちは先に寺の本堂へ向かった。
仏像に手を合わせる。

「なんのために生まれてきたんだろうな」
「え……。どうしたの」
「母さんが死んで、オレの時間は止まってしまったような気がする」

オレの世界から、彼女だけがいなくなった。
いなくなってしまったから、余計に思い出すのかもしれない。

仏像を見つめたまま、思いを吐き出す倖太は、自分よりも小さく、壊れそうに見えた。

「琴音と会って、心が生き返った気がしたんだ」
「本当?」
「ああ。犯人が見つかるまで、オレは幸せになっちゃいけない気がしたけど……お前といると楽しいよ」

そばにいさせて、倖太の声に小さく頷く。


車が発進する音に振り向く。
母の車が駐車場を出ていった。