「大切にしてたよね」
「琴音」
「母さんにとって一番が家族でなくてもいいんだ。二番目でもいいんだ。でも倖太を嫌う理由がわからない、美香さんの息子だ、彼が何かした?」

倖太がしているのは、犯人探し。
母さんじゃないよね。
殺してないよね。

もし犯人が母さんだったら、僕はどんな顔で彼に会えばいい?

「あの子は失敗作だった。生まれてきちゃいけなかった」

なんてことを。

「……母さん。どういう意味。言っていいことと悪いことがある」
「そうね……こんな母親でごめんなさい」
「意味わかんない、彼が何をしたんだよ」


まただんまり?


「逃げる気? 卑怯だよ」
「琴音」
「なに?」
「あの子とは……何度もしてるの」
「してるよ。今、そんなこと聞く必要ある?」
「あの子を愛してるの?」

愛してることが、何か問題ある?

いや、ない。

「……愛してる」
「そう……もう怒っても無駄みたいね」
「逃げないでよ、腹割って話そうよ!」
「話すことなんて何も無い!」
「母さん、それもお芝居!? ふざけるのもいい加減にしろよ!」

右頬を殴られ、僕は黙るしかなかった。

「ごめんなさい琴音」