倖太を帰して僕たちは話し合った。

「もともと倖太は母さんが引っ張ってきた。仲良くなってから取り上げるつもりなの」
「そうじゃないの。あの子はダメなの」
「なんで。他の男ならいいの? 言い分があるなら聞く、それから考える」

母さんは大事なことになると、言葉を濁す。

「言わないならそれでいい、何も聞かずに済むから。でも、それじゃ、母さんが何を考えてるのかわからないよ」
「……」
「子供の頃から、聞きたいことは山ほどあったよ。僕のお母さんは母さんじゃないのか、とか」
「……」
「母さんは家族に愛情が薄い気がする、とか。知ってるんだ、母さんは、倖太のお母さんのこと、好きなんだよね」

フォトフレームは割れてしまったけど、写真は捨てていない。