手のひらに乗るサイズの小さなガラスの靴。
童話なら、王子様が靴の持ち主を見つけ出して、ハッピーエンドになる。
倖太にとってのシンデレラは、もうどこにもいない。

「ガラスの靴が形見だなんて淋しい話だよ。犯人も見つからないし、泣きたくもなる」
「きっと見つかるよ。テレビ局でお母さんの映像とか見てたから、悲しくなったんでしょ」
「……そうだな」

僕は床に転がったままの倖太のほおをつまむと、思い切り左右に引っ張った。
「痛っ! なにすんだ!」
「笑ってよ」
「君の泣き顔なんてブサイク過ぎて見てらんないよ。笑ってよ」
「……琴音」

体を起こして、倖太が僕の頬をつねった。
「……お前はホント、かわいくない」

お仕置き、と彼の唇が重なった。