彼の目は腫れていた。
涙のあとが乾いている。

「どうして泣いてるの」
「……」

倖太がカラーボックスの上に飾ってある、ガラスの靴の置物を指差した。
片方だけのガラスの靴。

「これ、オレが母さんにプレゼントしたんだ。誕生日に」
「そうなんだ?」
「もう片方は母さんが持ってるはずなんだけど。死んでた時は持ってなかった」
「家にあるんじゃないの?」
「母さんは、オレが10歳くらいの時に出ていって、一緒に暮らしてなかったんだ」
「……そうだったんだ」
「あの靴、どこにあるんだろうな」