セカンドデビュー【完】

家に帰ると、玄関の鍵が開いていた。
革靴と、見慣れないパンプスが、仲良くたたきに並んでいた。
廊下から、ラベンダーの線香の香りがした。

「お帰り倖太。またオーディションか」
「うん。久しぶり、お父さん」

親父は、数年前から、別の女性と半同棲をしている。月の半分は帰って来ない。
もともと、妻が家に戻らないのだから、気持ちはわからなくはないのだが……。

「お久しぶり、倖太さん」

いつも髪をふわふわにカールさせて、淡いピンクのワンピース。
父よりだいぶ若いだろう、彼女は、薄化粧のせいか、儚げで、失礼ながら幸薄そうに見える。
派手めな顔だった母と比べると、どうしても、「彼女のどこがいいんだろう?」と不思議に思ってしまうのだが。

母親がいないかわりに、親父の愛人と仲良くなっている。
……おかしな、家。