大場たちを追い払い、アヤさんも撮影へ出かけていった。
顔を洗って、売店でパンを買っていると、「あ、あのっ!」と突然声をかけられた。
振り向くと、制服姿の女の子が一人立っている。
そこから数メートル離れたところに、同じ年頃の女の子たちが、六人。

「はい、何か?」
「あのッ! 琴音くんの、マネージャーさんの、橘さんですよね!」
「はい、そうですけど……。あなたは?」
「私たち、琴音くんのファンなんです。ネットで見て」
「そうですか。病院の名前まで出てるんですか」
「出てなくても、このへんの救急車がどこに搬送されるかなんて、調べればわかります」

それもそうだな。

「……何か御用ですか?」

「手紙書いてきました、渡してもらえないでしょうか」
「……わかりました」

手紙の束を、紙袋に入れて渡された。
琴音にもファンがいるんだな……。

「ところで、何故私の名前を?」
「琴音くんのブログで。イケメンのマネージャーって、有名なんですよ」
「ブログ? あいつブログやってたのか」
「え、知らなかったんですか?」

彼女はスマートフォンを取り出すと、そのブログを見せてくれた。

なんだよ、聞いてないぞ。

「琴音くん、新しいマネージャーが来たって、すっごく喜んでたんです」
「え……」