「……もうひとつ聞いていいですか」
「まだ何か」

「以前別の現場で、琴音とケンカしたと聞いています。原因は琴音の出生についてでしたっけ。どうしてそんな話題に?」
「オレは……。前から琴音のことが好きでした。本当です。スタジオでたまたま琴音のことを話していたとき、誰かが『あの子、もらわれっ子らしい』と。ただの噂だと思って、本人に聞いてみたんです」

「それで……?」
「殴られました。そんな噂があることは、琴音も知っていたみたいでした。でも、まさかあんなに怒るなんて」

くだらない噂だと笑い飛ばしてくれると思っていただけに、まさか殴られるとは。

それ以来、琴音とは仲直りできずにいると大場はため息をついた。

「噂はともかく、あなたは、琴音に迷惑をかけてしまうみたいですね。もう琴音に近づかないでください」
「……」
「失礼します」