『倖太は私の王子様ね』

大切にするね、と笑ってくれた母を、今でも忘れることができない。

彼女が持っていた片方は、今はどこにあるんだろう。



カラーボックスにガラスの靴をおさめる。
仏壇代わりだ。


心のどこかで、彼女が玄関から帰ってくるのを期待している。
そんなこと、ありはしないというのに。