停電はまだ直らない。琴音の髪を撫でたら、ふわっと花の香りがした。
どこのシャンプー使ってるんだろう。

「……」

空を走る雷が、琴音の白い肌を照らし出した。
誰かに似ている唇の形に、触れたくなる。

「……橘さん」
「あ、起きた?」
「お願いがあるんだけど」
「なに?」
「倖太って呼んでいい?」
「どうしたの急に」

雷も鳴ってるし、停電も直らないし。
ひょっとして……寂しいのかな。

それなら、仕方ないよな。

「いいよ。琴音の頼みなら」


今夜は泊まってったらいいよ、と琴音に言われ、オレは素直に従うことにした。