翡翠の悪魔の裏事情

「──っ」

 痛みをこらえて矢を引き抜き、ゆっくりと見せつけるように顔を上げる。

 予想通りの引きつった面々に口の端をつり上げた。

 矢にはやはり毒が塗られていたらしい、内部がズキズキと痛む。

 表面はすぐに修復されるが内部の治癒には時間を要する。

 よほどの恐怖なのか、男たちはベリルを見つめて固まったまま動かない。

[悪魔だ……]

 再び聞き慣れた言葉がか細く紡がれた。

 なんていう単語なんだろなと呑気に考える。

「案外、悪魔とかかね」

 苦笑して口の中でつぶやく。

 刺すような視線にもベリルは飄々(ひょうひょう)とその表情を崩さない。

 それがいち段と男たちの恐怖を倍増させた。

 言葉が通じるだろうか?

 ベリルは少女と青年に視線を向ける。

 何せ、学べる時間がほとんど無かったからな。