翡翠の悪魔の裏事情

 やや色合いが異なるがベリルと同じ緑の瞳をしている。

 なるほど、間違われた理由はそれか。

 しかし、青年の右目は開かないようだ。

 瞼(まぶた)を大きな傷が縦断している。

 金髪の青年と少女はどうやら知り合いらしく、湖に振り返ろうとした青年が少女から水を浴びせられていた。

 ほほえましい光景の刹那、ベリルと青年は同時に張り詰めた大勢の気配に気付いた。

 青年は少女に着替えを急かし、二人は駆けていく。

 彼らを追いかける大勢の声は、距離からしてこのまま走れば捕まる事はまず無いはずだ。

 しかし──

「だめか」

 ベリルは森中に充満している気配に眉間にしわを寄せる。

 すでに取り囲まれている、外からだけでなく中からも気配が増加していた。

 何かの移動手段を用いたのだろうか、気配を殺して二人のあとを追う。