ベリルが薄汚れた布に手をかけた瞬間──

[マント取り込むの忘れてた~]

 突然、窓が開かれ男と目が合った。

 二十代後半と思われる男は、いるはずのない影に目を丸くして言葉を失っている。

 余計な接触をしてしまった。

 ベリルは布を掴み取ると、そのまま飛び降りて夜の街を駆けた。

[今の、誰?]

 あっという間の出来事に男は呆然と暗闇を見つめた。