翡翠の悪魔の裏事情

「ふむ」

 言葉を理解する必要がある。

 まず一つの単語を理解したうえで、文法がどのような並びなのかを把握せねば。

 逃げながらの勉強は骨が折れる、教えてくれる者もいないのだから。

 ベリルはベランダから顔を出し周囲を見回す。

 夜の間に安全な場所を確保しなければ、昼間は一切の行動が制限されてしまう。

 そして自分の格好を見やった。

 とりあえずは服装をなんとかする必要がありそうだ。

「ん」

 向こう側の暗闇に目をこらすと、何かがぼんやりと白く浮き出ていた。

 よく見ると向かいの家にマントらしきものが干してある。

 昼間に取り込み忘れたのだろうか。

 ここからジャンプするには少々、遠い。

 加えて助走をつける幅も無い。

「面倒な」

 溜息混じりに発して周りを警戒しつつ、仕方なく下に降りて向かいの家のベランダへ向かった。