子どもがいるというのに矢を放つつもりか、それとも子どもを避けて当てる自信でもあるのか。

 ベリルは小さく舌打ちすると、少女を素早く抱きしめた。

[悪魔め!]

 矢が一斉に放たれ、数本の矢がベリルの体を貫いた。

 痛みが全身を走り小さく呻きを上げる。

 そうして少女から離れると、男たちをギロリと睨み付けそのまま駆け出した。

[待て!]

[大丈夫だったか?]

[矢は命中した。血の跡を辿っていけば──]

 暗闇の先に目をこらし、道に転々と残された血痕を注意深く探していく。

 暗く静まりかえった夜の街は、石壁と石畳を冷たく映し出し、そこかしこに妖しい気配を漂わせる。